フランスに学ぶアートな暮らし-1〜杉浦岳史さん(パリ在住ライター)
芸術の都、フランスの人々はどんな風にアートを楽しんでいるのでしょうか?
アートは人生を豊かにしてくれるもの
「芸術の都」と呼ばれ、世界中から年間1,500万人ともいわれるビジターを集めるパリ。街を漂うどこか特別な空気と雰囲気に、ただ歩いているだけでも心がワクワクしてきて、しばらく暮らした今でもそれは変わることがありません。そんな街で、人々はどんな風にアートを楽しんでいるのか気になりませんか?ルーブルやオルセーなど世界の名作がならぶ美術館めぐりも楽しいけれど、フランス人の芸術への思い入れとその奥行きの深さは、美術館の数だけでは語りきれません。この国には、アートをもっと身近に感じる場所や時間がたくさん。そこには、フランスならではの街の楽しみ方、人生を豊かに過ごすノウハウが垣間見えます。ガイドブックには書いていない、ちょっと素敵なフランス流アートな時間をご紹介します。
ギャラリー、芸術の最前線
まず最初にご紹介するのは、山手線の内側くらいのパリ市内に星の数ほどもありそうな「ギャラリー」。そこはアートの今を感じることができる「芸術の都」の発信拠点です。特にギャラリーが多く集まっているのは、国立芸術学校を中心にしたサンジェルマン地区、そして国立近代美術館が入ったポンピドゥーセンターからマレ地区にかけてのエリア。そのほか作家たちが多く住むモンマルトルやモンパルナス、最近では東の20区界隈などもアートスポットとして注目されています。近代絵画、現代アート、写真、彫刻、骨董など、それぞれのギャラリーには専門があって、自分の好みでふらっと立ち寄ってみます。そうしていると、知っているはずの街も少し違って見えてくるもの。「アートを買うつもりもないのにギャラリーに入るのはちょっと・・・」と構える必要はありません。たいていのギャラリーでは通りがかりで入っても何の問題もなし。この国では、真剣なアート愛好者でなくとも好きなギャラリーに気軽に出かけてギャラリストと話をし、そのまま帰ることもあるし、もし自分が買える値段で気に入った作品があれば購入して家に飾る。そういうことがほんとうに日常の光景なのです。多くのギャラリーでは扱いのあるアーティストや発掘したアーティストの展示会をつねに開催していて、特に現代アートでは世界の有力作家が美術館にもまさるコレクションを発表することも。しかもそれを入場無料で見ることができます。日本の村上隆氏を紹介したことで有名なマレ地区のギャラリー・エマニュエル・ペロタン、先ごろパリの8区に進出したNYのガゴシアン・ギャラリーなどは、まさに世界のアート界の最前線です。
オープニングパーティーでワイン片手に
こうした展示会の初日には、会場のギャラリーでオープニングパーティー(フランスでは「Vernissageヴェルニサージュ」と呼びます。)が開かれます。来場客にワインやシャンパンがふるまわれ、作家本人に出会えたり、パフォーマンスがあったりと華やかな雰囲気に。招待なしに入れるところも多いので、通りがかりに見つけたらぜひ入ってみたいものです。私も知り合いのギャラリーでときどきヴェルニサージュの手伝いをしますが、よく飲み、作品を眺めながら芸術や時事の話題に花を咲かせる人々の姿は、まさに「フランス流」。もしパリにいらしたら、そんなフランスらしさのつまったギャラリーを、ちょっとのぞいてみてください。
左上)スケールの大きいギャラリーも多い 右上)モンパルナスのとあるギャラリーにて 左下)マレ地区のギャラリーめぐりの合間に広場で休憩
杉浦岳史さん
東京で広告ライター、ディレクターとして活動ののち2009年に渡仏。現在パリの高等学院IESAに在籍し、美術史、アートマネジメントやアートマーケットを学びつつ、執筆活動をつづける。
http://ameblo.jp/sucreweb/
パリのアート情報はこちらのサイトをご参考に。
アート情報誌<l’Officiel>のウェブサイト http://www.officiel-galeries-musees.com/